業務委託契約書02

業務委託契約書02の概要

会社(甲)が、会社外の個人・法人(乙)に、その平常の事業の部類に属する取引の代理を委託する場面を想定した業務委託契約書です。いわゆる代理商契約を念頭に置いています。民法だけでなく、会社法や商法への配慮も必要となる可能性があります。

ご利用の際の注意点

リスクをきちんとコントロールするためには、検討すべきポイントを把握したうえで、契約書を見る必要があります。本テンプレートに記載されているチェックポイントは、その手がかりとなるものです。もっとも、チェックポイントは、「これさえ気を付けていればあらゆる場面に対応できる」というものではありません。必ず、個別の事情に応じた検討・修正をしたうえでご利用ください。

業務委託契約書02のチェックポイント一覧

  1. 委託業務の内容(第1条)
  2. 契約の代理の方法(第1条)
  3. 委託手数料(第3条)
  4. 再委託(第4条)
  5. 費用の負担(第5条)
  6. 通知・報告(第6条)
  7. 損害賠償(第10条)

業務委託契約書02の内容


業務委託契約書

甲○○○○株式会社(以下「甲」という)と乙△△△△(以下「乙」という)とは、甲の業務に関して、次のとおり業務委託契約(以下「本契約」という)を締結する。

第1条(目的)
1.甲は、本契約の定めるところにより、以下の業務(以下「本件業務」という。)を乙に委託し、乙はこれを受託する。
(1)○○○○○
(2)△△△△△
2.乙は、甲の商号・商標を利用し、契約の締結および、契約の相手方から契約に基づく代金を受領することができる。
3.乙が契約に使用する契約書の様式は、甲がこれを定める。

チェックポイント1 委託業務の内容

第1条1項は、委託業務の内容を定めています。委託する業務の内容が不明確だったり、抜け漏れがあったりすると、後のトラブルのもとになります。委託業務の内容については、別紙も活用して、可能なかぎり詳細に記載する必要があります。

2項によって、乙は、甲の商号・商標を利用する権限、契約締結の代理権および契約代金の受領権限を与えられています。甲が乙に対して契約締結の代理権を付与した場合、両者間には委任契約が存在することになります。

チェックポイント2 契約の代理の方法

第1条3項は、乙が2項によって与えられた権限に基づいて契約を締結する際に使用する契約書の様式については、甲が決めることとしています。

契約の代理の方法については、商法504条が適用されることを前提に、代理人(乙)による顕名の要否については特に定めない場合もあります。ただ、この場合において、契約の相手方が代理行為であることを知らなかったときは、商法504条に基づき、代理人(乙)に履行請求されるおそれが生じます。そこで、商法504条の適用を排除するため、委託者(甲)所定の契約書の中に、代理人(乙)が委託者(甲)の代理人である旨を表示させることもあります。


第2条(有効期間)
1.本契約の有効期間は、本契約の締結日から1年間とする。ただし、本契約の期間満了1ヶ月前迄に、甲乙いずれからも本契約を更新しない旨の書面による意思表示のない限り、自動的に満了日から更に1年間更新されるものとし、以後についても同様とする。
2.前項にかかわらず、甲および乙は、相手方が本契約に違反したときには、その相手方に対して何らの通知催告を要せず直ちに本契約を解除し、かかる損害の賠償を請求することができるものとする。

第3条(委託手数料)
1.本件業務に基づく乙の委託手数料は、以下のとおりとする。
(1)契約金額○○万円まで○○パーセント
(2)契約金額○○万円を超え○○万円までの部分につき○○パーセント
(3)契約金額○○万円を超える部分につき ○○パーセント
2.本件委託業務の委託料は、毎月○○日締めの翌月○○日払いとして、甲は、乙に、計算書を交付するとともに、乙の指定する金融機関の預金口座に、振込送金の方法により支払うものとする。

チェックポイント3 委託手数料

第1条2項によれば、乙は、甲から契約代金の受領権限を与えられていますが、この権限はあくまでも代金を「受領」する権限にとどまるため、乙が最終的に獲得できる報酬は、第3条1項に従って算定される委託手数料ということになります。

第3条2項は、甲が、1項に従って算定される委託手数料を乙の預金口座に振り込むこととしています。すなわち、乙が契約の相手方から受領した契約代金の全額を一旦甲に渡し、次に、甲が委託手数料を乙の口座に振り込む、という流れが想定されています。

これとは異なり、乙が、契約の相手方から受領した契約代金の全額から第3条2項に従って算定される委託手数料を差し引いた額を甲に渡す、という定め方をする場合もあります。この場合には、乙が所定の額を甲に渡さないリスクに備えて、一定額の保証金をあらかじめ甲に預託するよう定めておくことも有用です。


第4条(再委託の原則禁止)
乙は、甲の書面による事前の承諾を得た場合を除き、本件業務を第三者に再委託することができない。

チェックポイント4 再委託

民法644条の2によれば、受任者(乙)は、委任者(甲)の承諾がない場合でも、「やむを得ない事由」があれば、委任事務を再委任できることになります。第4条は、このような事態が生じることを防ぐための規定です。


第5条(経費)
1.甲は乙に対し、第3条に定める委託手数料に加え、本件業務遂行のために必要とされる以下の経費を負担するものとする。
(1)○○
(2)○○
(3)○○

2.乙は、甲に対して、前項に定める経費を請求する場合には、領収証またはその支出を証明できるものを提示しなければならない。ただし、必要とする金額を明細等で示すことにより前もって請求することができる。

チェックポイント5 費用の負担

委任契約の場合(チェックポイント1を参照)、その委任事務の処理に必要な費用については委任者(甲)の負担となるのが原則です(民法650条を参照)。ただし、契約書においてこれと異なる定めをすることも可能です。


第6条(報告義務)
乙は、契約を締結したときは、直ちに、契約内容、契約相手方を、甲に告知しなければならない。
乙は、甲より本件委託業務の進歩状況に関する報告を請求された場合には、遅滞なく甲に報告しなければならない。

チェックポイント6 通知・報告

第6条は、会社法16条を念頭においた規定です。

会社法16条が適用される場合、代理商(乙)は、取引の代理をしたときは、遅滞なく、委託者(甲)に対して、その旨の通知をしなければなりません。


第7条(権利義務の譲渡) 甲および乙は、本契約により生ずる権利の全部または一部を、第三者に譲渡または担保の目的に供してはならない。また、本契約より生ずる義務の全部または一部を、第三者に引き受けさせてはならない。

第8条(秘密情報)
1.本契約における秘密情報とは、本件業務に関連した技術・営業等に関する一切の情報のうち、甲および乙が相手方から秘密である旨を明示して開示されたものをいう。
ただし、次の各号の一に該当するものは、この限りでない。
(1)開示を受ける前から自己において既に所有していた情報
(2)正当な権限を有する第三者から入手した情報
(3)開示を受ける前から既に公知となっていた情報、または開示を受けた後に自己の責任によらず公知となった情報
(4)開示された後、その秘密情報によらず自らの開発により知得した情報
2.甲および乙から相手方への秘密情報の開示は、原則として書面・図面・記録媒体等の有形物により行う。それ以外の方法によって秘密情報を開示する場合は、別途書面により当該情報の内容を特定しなければならないものとする。
3.甲および乙は、事前に相手方の書面による承諾を得ることなく、本契約の内容および秘密情報を第三者に開示してはならない。ただし、法令の定めに基づく場合または権限ある官公署から開示の要求があった場合はこの限りでない。
4.本契約に基づく秘密保持期間は、その情報を開示した日から○年間とする。

第9条(個人情報)
乙は、本件業務に関連して甲から開示された個人情報(個人情報保護法2条1項に定められたものをいう。)について、個人情報保護法の規定に則って取り扱うものとする。

第10条(損害賠償)
甲および乙は、本契約に関して相手方の責めに帰すべき事由により損害を被った場合には、相手方に対しその賠償を請求することができる。

チェックポイント7 損害賠償

第10条は損害賠償について定めています。

賠償するべき損害の性質を「直接かつ通常の損害」としたり、具体的な賠償上限額を定めたりすることによって、損害賠償責任の範囲を限定することもあります。


第11条(契約の解除と期限の利益の喪失)
1.甲または乙は、他の当事者が次の各号の一つに該当したときは、催告なしにただちに、本契約の全部または一部を解除することができる。
(1) 本契約の条項に違反したとき
(2) 銀行取引停止処分を受けたとき
(3) 第三者から強制執行を受けたとき
(4) 破産・民事再生、または会社更生等の申立があったとき
(5) 信用状態の悪化等あるいはその他契約の解除につき、相当の事由が認められるとき
2.甲または乙は、第1項各号の一に該当した場合、あるいは本契約上の義務を履行しなかった場合は、相手方に対して負担する一切の金銭債務について当然に期限の利益を喪失し、直ちに全額を弁済しなければならないものとする。

第12条(不可抗力免責)
天災地変、戦争・内乱・暴動、法令の改廃・制定、公権力による命令・処分、労働争議、輸送機関・通信回線の事故、原材料・運賃の高騰、為替の大幅な変動その他当事者の責めに帰すことのできない不可抗力による契約の全部または一部の履行遅滞、履行不能または不完全履行については、当該当事者は責任を負わない。

第13条(準拠法・合意管轄)
1.本契約は日本法に準拠し、同法によって解釈されるものとする。
2.本契約に関する法的紛争については、〇〇地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

第14条(協議事項)
本契約に定めのない事項、本契約の解釈について疑義が生じたときおよび本契約の変更については、甲および乙は信義誠実をもって協議のうえ円満解決を図る。

以上、本契約の成立を証するため、本書二通を作成し、記名押印の上、各自一通を保有する。

    年  月  日

(甲) 所在地
   会社名

代表取締役             印



(乙) 住 所

氏 名               印