秘密保持契約書03

秘密保持契約書03

秘密保持契約書03の概要

当事者双方が相手方に対して秘密情報を開示する場面を想定した秘密保持契約書です。一方の当事者(甲)が他方の当事者(乙)に対して業務を委託することが前提となっていますが、様々なケースに広く応用しやすい内容となっています。また、秘密保持契約書02よりも詳細な規定ぶりとなっています。

ご利用の際の注意点

リスクをきちんとコントロールするためには、検討すべきポイントを把握したうえで、契約書を見る必要があります。本テンプレートに記載されているチェックポイントは、その手がかりとなるものです。もっとも、チェックポイントは、「これさえ気を付けていればあらゆる場面に対応できる」というものではありません。必ず、個別の事情に応じた検討・修正をしたうえでご利用ください。

秘密保持契約書03のチェックポイント一覧

以下の1~8に関する条項の有無と内容をチェックしてください。

  1. 本契約の目的(第1条)
  2. 秘密情報の定義(第2条)
  3. 秘密情報の管理方法(第4条)
  4. 秘密保持義務の内容(原則)(第5条)
  5. 秘密保持義務の内容(例外)(第6条)
  6. 知的財産権等の帰属(第7条)
  7. 損害賠償(第10条)
  8. 契約の有効期間(第12条)

秘密保持契約書03の内容


秘密保持契約書

○○○○(以下、「甲」という)と△△△△(以下、「乙」という)とは、秘密情報の取り扱いについて、以下の通り契約(以下、「本契約」という)を締結する。

第1条(本契約の目的)
本契約は、甲が乙に甲の業務を委託する一切の取引(以下、「本件取引」という)において、甲及び乙が相手方に開示し、又は相手方が本件取引の過程で知り得た情報の適正な取り扱いについて定めることを目的とする。

チェックポイント1 本契約の目的

第1条は、本契約の目的を定めています。

ここで定めた内容は、秘密情報の目的外使用の禁止(第5条1項)の範囲に影響するため、適切・明確に定めておく必要があります。


第2条(秘密情報の定義)
1.本契約において「秘密情報」とは、以下の情報を指す。
(1)甲の顧客の住所、氏名、電話番号、メールアドレスその他連絡先に関する情報
(2)甲の顧客の購入歴に関する情報
(3)甲の顧客のクレジットカード番号その他クレジットカード決済に関する情報
(4)甲のEC事業の売上の額、経費の額、平均購入単価、平均購入回数に関する情報
(5)甲の顧客からの苦情処理内容に関する情報
(6)個人情報保護法第2条1項に定める「個人情報」
(7)その他、相手方から開示される情報で、秘密情報であることが文書にて明示された情報
2.前項の規定にかかわらず、以下の各号に該当する情報は秘密情報に含まれない。
(1)開示を受ける時点で、既に公知公用であった情報
(2)開示を受ける時点で、既に保有していた情報
(3)相手方から書面により秘密保持義務を負わない旨の事前の承諾を得た情報
(4)正当な権限を有する第三者から秘密保持義務を負うことなく入手した情報
(5)開示を受けた情報によらず独自に開発した情報
(6)開示を受けた後に、自己の責めに帰すべき事由によらずに公知となった情報

チェックポイント2 秘密情報の定義

第2条は、この契約書で使われている「秘密情報」という用語の定義を定めています。この定義の仕方によって、どのような情報について秘密保持契約上の義務が生じるのかが変わってくるため、「秘密情報」の定義は慎重に検討する必要があります。

なお、2項は、秘密保持義務を課すべきでない情報を、「秘密情報」から排除しています。


第3条(開示者及び受領者の定義)
1.本契約において「開示者」とは、甲又は乙のうち、相手方に秘密情報を開示した者又は本件取引の過程で相手方に秘密情報を知られるに至った立場にある者をいう。
2.本契約において「受領者」とは、甲又は乙のうち、相手方より秘密情報の開示を受けた者又は本件取引の過程で相手方の秘密情報を知るに至った立場にある者をいう。

第4条(秘密情報の管理方法)
1.受領者は、秘密情報を厳に秘密として保持し、善良なる管理者の注意をもって管理・保管するものとする。
2.受領者は、秘密情報を知る必要がある自己の役員、従業者(派遣社員、出向社員、契約社員等を含む)(以下、「従業員等」という)に対して、必要最小限の範囲においてのみ、秘密情報を開示することができる。
3.受領者は、秘密情報の従業員等への開示に際し、開示の対象となる秘密情報が厳に秘密を保持すべき情報であることを明示し、周知させるとともに、各々の従業員等に対し、本契約に定められた受領者の義務と同等の義務を負わせるほか、監督その他必要な措置を講ずるものとする。
4.受領者は、開示者の書面による事前の承諾を得た場合のほかは、秘密情報の管理を第三者に再委託することはできないものとする。

チェックポイント3 秘密情報の管理方法

第4条は、受領者が開示された秘密情報の管理についていかなる義務を負うのかを定めています。

2項は、「従業員等」に対しては、必要最小限の範囲であれば、(開示者の書面による事前の同意などがなくても)秘密情報を開示できる旨を定めています。

3項は、「従業員等」に対して秘密情報を開示する際に履行すべき義務について定めています。

4項は、秘密情報の管理を第三者に再委託するためには、開示者の書面による事前の承諾が必要である旨を規定しています。


第5条(秘密保持義務の内容)
1.受領者は、本件取引の遂行以外のいかなる目的のためにも秘密情報を利用してはならない。
2.受領者は、相手方の事前の書面による承諾を得たときに限り、秘密情報を第三者に開示することができる。その場合であっても、開示の範囲は本件取引の遂行のために必要最小限の範囲に限定するとともに、受領者は、当該第三者に対し、本契約に定められた受領者の義務と同等の義務を負わせることとする。
3.受領者は、開示者の事前の書面による承諾を得た場合、又は開示者に対する業務上の関係において合理的に必要であると認められる場合でない限り、秘密情報の全部又は一部を複製又は複写してはならない。
4.受領者は、本契約が終了した場合、又は開示者から要求があった場合は、すべての秘密情報(これらの複製物を含む)を遅滞なく開示者に返却し、又は開示者が指示したときは、自らの責任において廃棄・消去するものとする。
5.前項の場合において、開示者が要求した場合、受領者は返却又は廃棄・消去にかかる証明書を開示者に提出するものとする。

チェックポイント4 秘密保持義務の内容(原則)

第5条は、受領者が開示された秘密情報の保持についていかなる義務を負うのかを定めています。

1項は、本件取引(第1条で定義されています)の遂行という目的以外の目的で秘密情報を利用することを禁止しています。

2項は、秘密情報を第三者に開示するための要件を定めています。

3項は、いかなる場合に秘密情報の複製・複写ができるかを定めています。秘密情報の複製について厳格に管理したい場合は、「、又は開示者に対する業務上の関係において合理的に必要であると認められる場合」との文言を削除することが考えられます。

4項と5項は、秘密情報の返却・廃棄について定めています。


第6条(秘密保持義務の例外)
1.受領者は、法令、官公庁又は裁判所の処分・命令等により秘密情報の開示要求を受けた場合、当該開示要求に対し、必要最小限の範囲に限り、秘密情報を開示することができるものとする。
2.受領者は、本件取引に関して相談・依頼するために、弁護士、税理士、公認会計士その他これに準ずる法律上の守秘義務を負う者に対して、秘密情報を開示することができるものとする。

チェックポイント5 秘密保持義務の内容(例外)

第6条は、第5条が定める秘密保持義務の例外を定めています。

1項は、受領者が法令等に基づいて秘密情報の開示を義務付けられた場合に配慮した規定です。この場合、第5条は適用されません。

2項は、本件取引に関する相談・依頼という目的のためであれば、弁護士等の法律上の守秘義務を負う者に対しては秘密情報を開示できる旨を規定しています。2項が適用される場合、第5条は適用されません。


第7条(知的財産権等)
甲及び乙は、本契約のもとでの秘密情報の開示が、開示者が秘密情報に関して有する特許権、実用新案権、著作権、ノウハウその他の知的財産権の譲渡又は実施権・利用権の許諾・同意を伴うものではないことを確認する。

チェックポイント6 知的財産権等の帰属

第7条は、秘密情報を開示しただけではそれに関連する知的財産権等の譲渡や使用許諾をしたことにならない旨を確認的に規定しています。

開示された秘密情報は一般的には非公開とされている情報であり、これに基づいて特許権や意匠権等の知的財産権を取得できる場合があるため、第7条を置くことによって、受領者をけん制しています。


第8条(取扱状況の報告・調査)
1.受領者は毎月1回、秘密情報の取扱いに関し、その保管方法、安全管理体制の整備状況、従業者・委託先等に対する監督の内容を開示者に報告しなければならない。
2.開示者は、受領者の本契約に基づく秘密情報の取扱状況に疑義が生じたときは、その取扱状況を確認するため、受領者に対して、秘密情報の取扱状況を立入り等により調査する権限を有する。開示者が受領者に対して秘密情報の取扱状況に係わる調査を実施する場合、受領者は開示者に協力しなければならない。
3.開示者は、前項の調査の結果、受領者における本契約の遵守状況が本契約の趣旨に照らし不十分であると判断した場合、受領者に対し、その改善を要求することができるものとする。

第9条(事故発生時における報告の義務)
1.受領者は、受領者自身あるいはその従業員等又は秘密情報を開示した第三者が、秘密情報を本件取引の遂行以外の目的で利用したり、第三者に開示、漏えいしたことが判明した場合又は、不正アクセス、秘密情報の紛失、破壊、改ざん、漏えい等の事故が発生した場合、速やかに開示者に報告し、開示者の指示に従い適切な措置を講ずるものとする。
2.受領者は、その従業員等又は秘密情報を開示した第三者が、前項に該当する事故を発生させ、又は本契約に違反した場合、受領者もまたその責めを負うものとする。
3.受領者は、第1項の場合において第三者から苦情、異議、請求等を受けたときは、速やかに開示者に報告するとともに、自己の費用と責任においてこれを解決するものとし、開示者がこれらに対応した場合にはその費用(合理的な額の弁護士費用及び裁判費用を含む)を開示者に賠償及び補償をしなければならない。

第10条(損害賠償責任等)
1.受領者が本契約に違反していると開示者が判断した場合、開示者は受領者に対して秘密情報の全部又は一部の使用を直ちに差し止めることができる。
2.受領者が本契約に違反し、開示者に損害を与えた場合、受領者は、開示者に対しその被った損害(合理的な額の弁護士費用及び裁判費用を含む)を賠償するものとする。

チェックポイント7 損害賠償

1項は差止請求について、2項は損害賠償請求について定めています。

なお、賠償するべき損害の性質を「直接かつ通常の損害」としたり、具体的な賠償上限額を定めたりすることによって、損害賠償責任の範囲を限定することもあります。


第11条(解除)
甲又は乙は、他の当事者が次の各号の一つに該当したときは、催告なしにただちに、本契約の全部又は一部を解除することができる。
(1)本契約の条項に違反したとき
(2)銀行取引停止処分を受けたとき
(3)第三者から強制執行を受けたとき
(4)破産・民事再生、又は会社更生等の申立があったとき
(5)信用状態の悪化等あるいはその他契約の解除につき、相当の事由が認められるとき

第12条(有効期間)
本契約は、甲乙間の本件取引関係が終了した日より3年をもって終了する。

チェックポイント8 契約の有効期間

第12条は、秘密保持契約の有効期間を定めています。

他の定め方としては、有効期間を1年間としたうえで、本契約を更新しない旨の書面による意思表示がない限り自動更新される旨を規定することもあります。


第13条(協議事項)
本契約に定めのない事項、本契約の解釈について疑義が生じたとき及び本契約の変更については、甲及び乙は信義誠実をもって協議のうえ円満解決を図る。

第14条(準拠法・合意管轄)
1.本契約は日本法に準拠し、同法によって解釈されるものとする。
2.本契約に関する法的紛争については、〇〇地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。

本契約締結の証として、本書2通を作成し、甲乙記名押印の上、各1通を保有する。

  ○○年○○月○○日

甲:


乙: